飯田の普通な一日
著者:HOCT2001


 ペシッ、ペシペシ……
 なんかが頭にペシペシ当たっている気がする。ちなみに今は授業中だ。
誰だこんなことをするやつは、と思って振り返ると桜井のやつが、文庫本一冊はあろうかという巨大な消しゴムをちぎってこっちへはじいているようだ。
あんのヤロー何処でそんなもん入手しやがった?っつーか、授業中にこんなことやって楽しいか?
やられてばかりは悔しいので先生に注意してもらわなければな、と思い手を上げる。
「おぉ、飯田、この問題とけるのか?さぁ、黒板でといてみろ」
先生はそういった。
どうやら例題の回答者を挙手で募っていたようだった。

 あのヤロー、ここまで計算に入れてやりやがったな!!
なんという権謀術策が働くやつだ。
しぶしぶ黒板へ向かうがわかるはずもない。
もはや教室中から失笑が漏れている。
やつにはあとでスコーピオンデスロックでもかけてやらないときがすまない。
「おいおい、解けるから手を上げたんじゃないのか?」
先生が言う。
「いや。これはデスネ、土製の輪が消えるくらいの天変地異が起こりそうな気がしてみんなに注意をしなければならないといけないと思いまして、手を上げたしだいです」
もうわけがわからないことを言っているのは俺にだってわかるさ。
それでも言い訳がこれではあまりに情けないきがする。
「飯田、大丈夫か?先生がいい精神科へ連れて行ってやるぞ。早速車を回してくるから…」
「いや、いいです。自分で自分が変なことがわかっているうちは大丈夫ですから」
「そうか?ではどうした?」
「だーかーらー、天変地異が…」
「やはり精神科へ…」

 そんな不毛なやり取りが10分ほど続いた。覚えておけよ、桜井、この借りはしっかり返すからな。

 そうして授業後に桜井の許へ向かった。

「どうしてくれるんだよ、クラス中から変態扱いだぜ、俺」
「もとからそうじゃないか」
桜井が言う。
「お前のせいでさらに変態丸出しになったっつーの。大体なで消しゴムを投げたんだ?」
「いや、さすがに授業中に眠ってしまうとかわいそうだと思ってな。頭悪いお前が授業で寝てしまったらさらに頭悪くなるだろ?」
なんか言い返せない俺が悔しい…
あいつは頭がいいから消しゴムハジキに集中していても中間テストに影響がないと見えるし。
しかし、ここで折れたら、一生こいつに逆らえない気がする。
「じゃぁ、頭のいい桜井君はさっきの例題とけたのかね?」
「あぁ、もちろんさ。ここはアンペールの法則を使って磁場が…」
「わかったよ、もう。すみませんでしたー。勉強しますー」
結局悪戯の対称にされただけのようだ。

 物理教室の帰りに、和樹に出くわした。
「飯田、お前は頭は悪かったが、精神を病むところまでいったとは思わなかったぞ…」
早速学校中に俺のおばか問答が伝わってるし。
なんか彩桜の情報伝達システムについて研究してみたら少しは頭がよくなるかもしれんな。
まぁ、それはさておき、和樹との話に戻る。
「いや、別に精神病んでないから。桜井の策略にはまっただけだから。そういえばお前は理科は地学だよな?」
「あぁ。波っつーのは、海の深さ、湾の形、風などでいくらでも変わるからな。サーフィンをやる上で学んでおいて損はない」
「お前、よほどのサーフィンバカだな。でも、一緒に大学部まで上がれないのは寂しいぜ」
「気持ち悪いこと言うなよ。大体、高校部卒業してもいつでも会えるじゃないか」
「そうなんだけど、学園生活の中で和樹がいないのは寂しいぜ」
「そう思っていてくれてありがとよ。さて、次の授業に行くぞ」
といって、俺の手を引いて教室へ連れて行った。

 次の授業は現国、桜井がなんか悪戯をしたとしても現在の日本語だったら手を上げて適当に答えても問題ないだろ。
さーて、寝るぞー。
現国なんて、寝ても単位取れるからな。実際、今まで赤点とったことないし。自慢するところではないが。いや、やっぱ自慢しておこう。漢字書けんけどなっ。
と、思っていたら先生にあてられた。
「飯田、ここの部分の主人公の心境はどんな感じだ?」
あわてて教科書に目を通す。
「えぇと、シュークリームを食べていたら、クリームが後ろからはみ出てしまってしまったー、という感じです」
「えらく現実的な話を持ち出すんだな、飯田は。もちろん不正解。模範解答は、小森、やってみろ」
やはりダメだったか。それにしても女子をあてることはないであろうに。
と、思ったら、
「ここでは主人公が最高の親友を失って自分の殻に引きこもっているところです。だから、すべてのことに対して絶望し、死すら考えていると考えます」
「小森はさすがだな、正解。みんなもっと表現力を身につけるように」
小森さん、すげーよ。
というか、俺の表現力がシュークリーム並と言った所なのか?凹むぜ。

 さーて今日の授業は全部終わり。桜井や和樹と遊ぶか。
「かーずーきっ、あーそーぼっ!」
「何して遊ぶのさ」
「ゲーセン行こうぜ、ゲーセン」
「遠い」
「それだけで否定?じゃぁ、和樹は何したいんだ?」
「サーフィン」
「俺たちにはできないから」

 そこへ救世主が現れた。

「みんなで遊んだほうが楽しいわよ」
と、日生さんが小森さんとともに来たのだ。

「身体を使わない遊びだったら私でもできるよー」
と、小森さんが意見を言う。

「じゃぁ、トランプなんかどうかしら?」
「おっ、いいねぇトランプ。何をする?」
桜井はノリノリだ。
「無難に大富豪なんて同かしら?」
日生さんが意見を出す。
「いいよ、それで」
和樹は賛成みたいだ。
「じゃぁ、大富豪で」

そうしてカードを配っていく。
うむ、当たり障りのないカードだな。大貧民にはならないか。
まずは。3,3と二枚だしをする。
そこへ和樹が5,5と続ける。
残りのみんなはパスみたいだ。
仕切りなおして和樹から始める。

 そして数刻後。
「よっしゃあーー、俺、大富豪だぜ」
何の恵みか大富豪になった。
「じゃぁ、誰脱がそうかなぁ」
『そういうゲームじゃないから』
全員からつっこまれた。
「すみません。エロ衝動が収まりきれませんでした」
涙目で謝った。

 そんなこんなで今日も過ぎていくのであった。



投稿小説の目次に戻る